FXの達人さんによる2016年から17年の為替相場焦点まとめ
信用格下げ相次ぐ南欧諸国などについてです
欧州の財政不安は煉り続けている。ムーディーズは、3月7日、ギリシヤの信用格付けを「B1(シングルBプラスに相当)」に3段階引き下げると発表した。欧州連合(EU)などの支援下で財政赤字の圧縮を進めているものの、デフォルト・リスクがなお高いと指摘し、格付け見通しも「ネガティブ」としている。
さらに同社は、同月10日にスペインの格付けを「Aa2(ダブルAに相当)」に1段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」とした。同月15日には、ポルトガルを「A3(シングルAマイナスに相当)」に2段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」と発表した。
ポルトガルでは政局が混乱している。同国議会は、3月23日に財政再建に向けた追加緊縮策を否決し、これを受けて、ソクラテス首相は辞任を表明した。今後は、ガバコシルバ大統領が与野党と対応を協議するが、現政権は崩壊し、5~6月に総選挙が実施される公算が出ている。
このため、4月15日に43億ユーロ、6月15日に49億ユーロの多額の国債償還を控え、この間に政治空白が発生する恐れが出てきたため、ギリシヤ、アイルランドに続き、ポルトガルが、EUと国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請する可能性が高まっている。
さらに、ポルトガルの危機が深まれば、スペインやイタリアなどに不安が飛び火るリスクが出てくる。なおS&Pは、ポルトガルの政局混乱を受けて、翌24日、同国の長期信用格付けを「トリプルB」に2段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」とした。
ポルトガルの政局混乱を受けて、同国の国債利回り(10年物)は、3月25日の欧州市場で、ユーロ導入以来、初めて8%まで上昇した。一方、EUとIMFへの支援要請を巡っては、ルクセンブルクのユンケル首相が「750億ユーロが妥当にみえる」との見方も出てきている。
EUには現在、融資上限として2500億ユーロ程度の欧州金融安定基金(EFSF)や、欧州委員会による600億ユーロの債券発行という金融面でのセーフティー・ネットがあり、アイルランド向けに発動したものを差し引いても、ポルトガル支援の財源が枯渇する可能性は小さい。
しかし、今後は、6月末まで予定通りEFSFの融資能力を4000億ユーロの引き上げられるかが重要な注目ポイントなる。
この措置は、財政危機がスペインやイタリアなどに伝播した場合に不可欠となるが、融資能力の拡大にはフィンランドの内政がカギを握り、4月17日に同国で開催される総選挙の結果いかんでは、6月末までの融資能力引き上げが困難となるリスクがある。
さらに6月に欧州銀行監督機構(EBA)が発表する銀行のストレス・テスト結果も注目される。2010年のような当初より資本不足を回避するような甘い査定内容であれば、再び市場の洗礼を受けることとなろう。このように、財政不安によるユーロ下落圧力は継続しよう。